フィリピンで最も権威のある音楽賞『Awit Awards』に参加|P-POPの存在感と日比の業界連携を現場で体感
フィリピンで最も権威のある音楽賞『Awit Awards』に参加|P-POPの存在感と日比の業界連携を現場で体感

フィリピン・マニラの Meralco Theatre にて開催された 第38回 Awit Awards(主催:PARI) に参加させていただきました。Awit Awardsは、OPM(Original Pilipino Music/フィリピンの国内音楽)の優れた作品・アーティストを表彰する、フィリピンを代表する音楽アワードのひとつです。主催が音楽業界団体(PARI)ということもあり、授賞式としての華やかさだけでなく、“業界の中心イベント”としての存在感が強い印象でした。
今回は「視察者」としてではなく、KDR Music Houseの新人アーティスト「Letters from June」に帯同する形で参加しました。そのため、通常の来場では見えにくい アーティスト側の導線を実際に体験できました。レッドカーペットならぬパープルカーペットを歩かせてもらいました。
会場自体はそこまで広くないものの、トップアーティストやレーベル、制作、メディア関係者が数多く集まっていて、フィリピン音楽業界の「現場の空気」を間近で見られる貴重な機会になりました。これも現場の方から聞いたのですが、フィリピンで最も音楽ビジネスで成功した人物として知られる “Viva Musicの会長さん” は、お好み焼きレストラン『ぼてじゅう』のフランチャイズオーナー(フィリピン国内)だそうです。
日本からは CEIPA の皆さまが登壇されており、日比の音楽連携が“実務レベル”で進んでいることを現場で実感。また、日本とフィリピンにルーツを持つアーティストのEna Moriさんにもご挨拶できました(Best Remix Recording受賞)。改めて受賞おめでとうございます。


■まずAwit Awardsって何?(ざっくり言うと、フィリピン音楽業界の中心イベント)
Awit Awardsは、フィリピンの音楽業界団体 “PARI” が主催する音楽賞で、フィリピン国内の主要プレイヤーが一堂に会する場でもあります。授賞式だけでなく、会場内の交流スペースではアーティストや関係者が自然に会話を交わしており、「アワード=ネットワーキングの場」として機能しているのを強く感じました。ステージの華やかさはもちろんですが、関係者同士の距離感や動きも含めて、「あ、ここが現場なんだな」と思うシーンが多かったです。ちなみに観覧チケット等の一般発売はなく、完全に業界向けのアワードとなります。
■今年の空気感:P-POPの存在感が強い
ノミネートの話題では、昨年に引き続き K-POPをベースに発展してきたP-POP勢 の存在感が目立っていました。SB19 / BINI といった名前が並ぶだけで、市場の熱量が伝わってきます。もちろんバンド勢の強さも健在で、結果的に Cup of Joe / Ben&Ben / Lola Amour などが主要賞を獲得。P-POPとOPMの両方が前に進んでいる、今のフィリピンらしいバランスを感じました。Lola Amourは2025年のMUSIC AWARDS JAPAN(MAJ)で、楽曲「Raining in Manila」がPhilippine Popular Music特別賞を受賞しいます。また、部門の作りにもフィリピン文化が反映されていて、クリスマスソング部門や子ども向け楽曲部門が存在する点が印象的でした。
■主な受賞(抜粋)
- Album of the Year:Cup of Joe
- Record of the Year:Ben&Ben「Triumph」
- Favorite Album:BINI「Talaarawan」
- Best Remix Recording:Ena Mori
■今年は「テレビ×デジタル」の戦略がかなり見えやすかった
今回の第38回 Awit Awardsでもうひとつ印象的だったのが、TV局とのパートナーシップを打ち出し、“テレビ×デジタル”の導線を強化していた点です。今年は MQuest Venturesの若者向けプラットフォーム「Vibe」 と提携し、イベント名称も 「38th Awit Awards powered by Vibe」 という形で展開されていました。(予算が限られるので、TVとの連携は一つの正解の形だと関係者の方も言っていました。)
授賞式は会場(Meralco Theatre)から TV5で放送され、同時に Vibe PH / TV5 / 関連アカウントなどでも配信されるマルチプラットフォーム型だったとのこと。
■Vibeとは?
Vibeは、2025年8月にTV5で放送が始まった新しい音楽/バラエティ番組で、制作は MQuest Ventures が手がけています。最大の特徴は、ファン投票で週刊Top 10を決める設計になっていること。投票は SMS・Web・Meta Messenger など複数の方法で行われ、ラジオ(105.7 TrueFM)経由でのリクエスト投票にも対応しています。
番組内は、新人や次世代を扱う 「Uprising」、レジェンド枠の 「The OG Experience」、メインの 「The Main Vibe」 などのセグメントで構成されており、“テレビ番組”というより 音楽ファン参加型の仕組みとしてデザインされている印象です。
SNSを日常的に使いこなす若い世代が厚いフィリピンでは、こうした「投票→拡散→番組体験」という形がハマりやすいのだと思います。ちなみにフィリピンの年齢中央値は約27歳前後とされます。
■日本からCEIPAの方が(日本の音楽業界団体)が登壇
今回、日本から CEIPAの皆さまが登壇 されていたのは、個人的にかなり象徴的でした。日本の音楽業界がフィリピンを、「連携の相手」として見始めていることが、言葉以上に空気で伝わってきます。こういう場に個別企業ではなく“業界団体”が登壇するのは、フェーズが一段上がるサインだと思います。現場で見ると、これは結構リアルに感じるやつです。もちろん今すぐにというわけではないでしょうが、近い将来具体的な経済的連携企画が行われることを期待します。
■まとめ
今回の参加を通じて、PARI主催アワードとしての権威性、Vibe/TV5による若年層向け演出、そしてアーティスト導線から見た現場構造など、多面的な情報を得ることができました。これらは、今後進めていく日本人アーティストのフィリピン展開や各種施策を考える上でも、有益な知見になったと思います。余談ですが、Awit Awardsの制作に知り合いが何人もいて、妙に“身内感”があったのも心地よかったです。笑
